全国から学ぶ、つながる:全日本民医連 医学生のつどい開催報告(12月21~22日 in 大阪)
2024年12月21日~22日、大阪で開催された「全日本民医連 医学生のつどい」には、全国から100名を超える医学生、20名の医師、そして100名以上の職員が参加し、医療と社会的課題について活発な議論が行われました。栃木県民医連からも3名の医学部奨学生と栃木民医連の既卒医師が助言医師として参加しました。今回の医学生のつどいでは「社会的健康決定要因(SDH)とソーシャルキャピタル」と「優生思想に関する歴史的背景と現代の課題」の2つのテーマを中心に、医療現場での実践例と社会への提言が共有されました。
社会的健康決定要因(SDH)とソーシャルキャピタル
落合甲太医師の講演
大阪民医連で長年、地域医療と健康格差に取り組む落合甲太医師が、所得格差や社会的つながりが健康に及ぼす影響について講演を行いました。講演ではSGDも行われ活発に医学生同士の意見交換が行われました。
健康格差解消のアプローチ
従来の「ハイリスクアプローチ」ではなく、「ポピュレーションアプローチ」の重要性が強調され、イギリスでの「パンの塩分低減」の成功例を交え、社会全体を巻き込んだ取り組みが健康改善に必要だと語られました。
喫煙率と所得格差の関連
男性の喫煙率が1950年代には80%を超えていましたが、現在は約30%に減少。一方で、所得格差による健康の不平等は続いており、最高所得層と最低所得層の鬱病発症率には6.9倍の差がある現実が示されました。
ソーシャルキャピタルの実践例
患者と医療者の信頼関係を築き、治療の成功率を向上させるためには、社会的つながりを活用した地域医療の取り組みが有効です。具体例として、糖尿病患者と栄養士、ソーシャルワーカーが協働で健康改善計画を策定する事例が紹介されました。
優生思想に関する歴史的背景と現代の課題
加賀美里帆医師の講演
優生思想が日本の医療や社会に及ぼした影響について、1948年の優生保護法制定から現代までの変遷を追い、医療倫理と人権問題を掘り下げました。
強制不妊手術の事実
優生保護法に基づき、約2万5,000件の強制不妊手術が行われ、その60%が本人の同意を伴わないものでした。この歴史的事実を踏まえ、医療者の責任と反省が語られました。
現代の医療倫理と人権
加賀美医師は、高齢者医療や障害者支援での無意識の差別を指摘し、意思決定支援やアドバンスケアプランニング(ACP)の必要性を強調しました。医療従事者の意識改革が求められています。
医学生たちの感想と成果
議論を通じた学び
参加者は、「他大学の学生との議論を通じて視野が広がった」「無意識の偏見に気づくきっかけになった」など、多くの学びを得たと語っています。特に、差別や言葉の選び方に関する議論では、LGBTQやジェンダー、多文化への理解が深まりました。
次世代医療への意識向上
3月に予定されている「医学生のつどい」や実習プログラムに向けた意見交換も行われ、次世代の医療リーダーとしての意識を高める時間となりました。
全国から集まった医学生たちと専門家による議論が織りなしたこの2日間は、医療と社会を結ぶ架け橋として重要な役割を果たしました。次回の開催にも期待が寄せられています。