第45回 民医連の医療と研修を考える 医学生のつどい「春つどい」
2025年3月22日(土)~3月23日(日) に、第45回 「春つどい」 が開催されました。
全国の医学生が集い、民医連の医療や研修について学び、意見を交わす貴重な機会となりました。
開催概要
日時: 2025年3月22日(土) 10:00~21:00
2025年3月23日(日) 9:00~12:00
場所: TKPガーデンシティ仙台
プログラム内容
3月22日(土)
学習企画:「犠牲のシステム 〜基地と原発の問題〜」
講師: 高橋 哲哉 さん(東京大学名誉教授)
分科会(4テーマ)
- 平和・戦争:畠山 澄子 さん(国際交流NGO ピースボート)
- 災害医療:矢崎 とも子 さん(坂総合病院 医師)
- 公害:医瀬 文雄 さん(大阪PFAS汚染と健康を考える会)
- ハンセン病:大川 正治 さん(群馬・ハンセン病問題の真実をめざし、ともに生きる会 事務局長)
各分科会では、専門家の講義をもとに、活発な意見交換が行われました。
3月23日(日)
研修企画:「医師の働き方と民医連医療」
講師: 植山 直人 さん(全国医師ユニオン代表)
医師の働き方やキャリアについて、具体的な事例を交えながら議論が進みました。
参加者からは、「将来の働き方を考える上で参考になった」「多様な医療の現場を知ることができた」といった感想が寄せられました。
参加者の声
- 「全国の医学生と意見を交わせて刺激を受けた。」
- 「普段学ぶ機会が少ないテーマについて深く考えることができた。」
- 「将来の医療や社会について考える良い機会になった。」
今回の 「春つどい」 も、多くの学びと交流の場となりました。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
高橋先生の講演
基地問題と原発問題に共通する「犠牲のシステム」
講義の冒頭、高橋さんは「命の平等」というテーマのもと、社会において特定の地域や人々が犠牲にされる構造があることを指摘しました。特に、沖縄の米軍基地問題と福島の原発問題を比較しながら、これらがどのように「犠牲のシステム」として機能してきたのかを説明しました。
沖縄には全国の在日米軍基地の約70%が集中しており、基地に起因する事件や事故、環境問題などが絶えません。このような負担が一部の地域に押しつけられている背景には、日本の安全保障政策が沖縄の犠牲の上に成り立っているという構造があります。同様に、原発についても、多くが地方の過疎地に建設され、そこで暮らす人々がリスクを負わされる形になっています。福島第一原発事故の後も、原発政策は推進され続けており、再び同じような被害が起こる可能性があることが懸念されています。
「犠牲は見えにくくされる」—私たちの無関心が問題を深刻化
高橋さんは、これらの問題が長年続いてきた理由の一つに、「犠牲が見えにくくされている」ことを挙げました。原発事故が発生する前、福島県内では「原発は安全で経済にも良い影響を与える」という認識が広まっていました。同じように、沖縄の基地問題も本土の人々にとっては遠い問題として捉えられがちです。この「見えにくさ」が、問題の解決を困難にしているという指摘は、多くの参加者にとって考えさせられるものでした。
活発な質疑応答:議論を深める
講義の後、参加者との質疑応答が行われました。
ある参加者からは、「異なる意見を持つ人とどのように対話をすればよいか?」という質問がありました。これに対し高橋さんは、「まずは相手の話をしっかり聞くことが大切。すぐに反論するのではなく、相手の立場を理解し、どこに問題があるのかを吟味することが重要だ」とアドバイスしました。
また、別の参加者からは「犠牲のシステムをなくそうとすると、また別の犠牲が生まれるのでは?」という鋭い指摘がありました。高橋さんは、「新たな犠牲を生まないためには、単にお金で解決するのではなく、被害者の声を丁寧に聞き、歴史に学びながら、より包括的な解決策を考える必要がある」と述べました。
学習会を終えて
今回の学習会では、沖縄の基地問題や原発問題を通じて、日本社会の中にある「犠牲のシステム」について学びました。問題が複雑であるがゆえに、単純な解決策はありませんが、まずは「見えにくい犠牲」に目を向けることが大切であると感じました。
講義の最後に、高橋さんは「私たちは、これからの社会をどう作っていくのかを考えなければならない。そのためには、一人ひとりが現状を知り、関心を持ち、声を上げることが重要だ」と締めくくりました。
年間を通して医学生が学びの報告—命の平等を考える
医学生が様々な社会問題を学び、命の平等について考えた報告をまとめました。ここでは、民医連の災害支援、ハンセン病問題、公害(水俣病)問題、戦争と平和の4つのテーマについて取り上げます。
1. 民医連の災害支援と命の平等
災害の影響と格差
災害による被害は、家屋の倒壊や停電・断水だけではなく、精神的な後遺症や原発事故による長期避難生活など、多岐にわたります。しかし、こうした被害は単なる自然現象ではなく、もともとあった社会的な格差をさらに顕在化させる要因ともなります。特に、高齢者や要介護者、障がいのある人、妊婦など、生活環境の悪化に脆弱な人々がより大きな影響を受けやすいのが現実です。
民医連の災害支援の特徴
民医連は以下の4つの強みを生かしながら、被災地での支援を行っています。
- 全国組織の力:全国の仲間が被災地に集まり支援活動を展開できる。
- 寄り添う力と継続性:地域住民に寄り添い、災害前後の長期的な健康支援を行う。
- 行政・公的機関への働きかけ:政策提言を通じ、住民の健康を守る。
- 地域に出る機動力:災害発生時に迅速に支援に向かう力を持つ。
M-MAT(民医連メディカルアシスタンスチーム)
民医連の災害支援チーム「M-MAT」は、大規模災害時に出動し、事業者の災害救助訓練や指導などを行います。M-MATは単なる医療支援ではなく、”支援者を支援する集団”としての役割を担っています。
学びと気づき
- 「役に立とうと思わないこと」
被災地で求められるのは「自分がやりたいこと」ではなく「現場が必要としていること」。 - 「送り出してくれた職員への感謝」
支援に行く人だけでなく、後方支援を行う人も災害支援の一部である。
2. ハンセン病問題と命の平等
ハンセン病の基礎知識
ハンセン病は、らい菌による感染症であり、現在では薬で完治可能です。しかし、かつては感染力や治療法に関する誤解から、患者は強制隔離され、差別や偏見を受けてきました。
ハンセン病問題の歴史
- 紀元前からハンセン病患者は差別の対象だった。
- 明治から昭和にかけて、日本では「らい予防法」により強制隔離が進められた。
- 1996年に「らい予防法」が廃止され、2001年に国が強制隔離政策を憲法違反と認めたが、現在も偏見が残っている。
長島愛生園での学び
長島愛生園は、日本初のハンセン病療養所として設立されました。現地でのフィールドワークを通じて、患者作業や収容所の実態を学び、療養所が「治療の場」ではなく「社会から隔離するための場」だったことを実感しました。
学びと気づき
- ハンセン病患者は、家族からも引き取られず、納骨堂には無数の遺骨が残された。
- 入所者の考え方は多様であり、単純に「可哀想」という視点では捉えられない。
- 命の平等が社会の雰囲気によって脅かされることがある。
3. 公害問題(水俣病)と命の平等
水俣病とは
水俣病は、熊本県水俣市で発生した公害病であり、工場排水に含まれるメチル水銀が原因で多くの住民が健康被害を受けました。
水俣病の歴史
- 1956年に公式発見されるも、原因究明が遅れ、被害が拡大。
- 1968年に公害病と認定されるまで、12年もの間、企業や行政の対応が遅れた。
- 患者認定基準が厳しく、多くの被害者が補償を受けられなかった。
現地での学び
- 水俣市では、認定されなかった患者が今も苦しみ、社会的に取り残されている。
- 「医療者が犠牲を生み出す可能性もあれば、減らす可能性もある」
患者の声を無視することで、さらなる犠牲を生んでしまうことがある。
4. 戦争と平和—命の平等を脅かすもの
世界で続く戦争
ウクライナ侵攻、パレスチナ問題など、多くの戦争が今も続いており、そこでの犠牲は「命の平等」を根本から破壊しています。
ガザの現状
- イスラエルによるガザ封鎖と度重なる軍事侵攻により、多くの人々が苦しんでいる。
- 戦争は単なる領土争いではなく、民族浄化の意図が含まれている。
日本の現状と軍事政策
- 日本の防衛費が急増し、武器の輸出が可能になるなど、戦争が身近なものになりつつある。
- 「新しい戦前」とも言われる状況に、私たちはどう向き合うべきか?
平和な社会を維持するために、社会の動きに注意を払う必要がある。
学びと気づき
- 戦争は最大の人権侵害であり、社会を破壊する。
- 医療者として、命の平等を守るために戦争に反対し、平和の実現に向けて考え続ける必要がある。
まとめ:私たちが考える命の平等とは
- 平時の取り組みが、災害や公害、戦争の被害を最小限に抑える。
- 社会の雰囲気が命の平等を脅かすことがあるため、それを変える努力が必要。
- 医療者は患者の声を聞き、社会に向けて発信する責任がある。
命の平等を守るために、私たちは学び続け、考え続け、行動し続ける必要があります。