【高校生医療体験レポート】
「話すことが医療になる」── 看護師・検査技師・医師と語る“地域医療の本質”
2025年春、栃木民医連では、医療に関心を持つ高校生を対象とした医療体験を開催しました。午前中の見学や体験を終えた生徒たちは、午後に医療スタッフとの座談会に参加。看護師・臨床検査技師・そして総合診療医である武井先生から、医療の現場で感じていることや、患者さんとの関わり方について直接話を聞くことができました。
「病気を見る」だけでなく「人をみる」──そんな地域医療の本質が垣間見えた時間となりました。
患者さんが“笑顔”だったことに驚き
「病気で来ている人たちなのに、みんな笑顔で話している。病院って、もっとピリッとしているものだと思っていた」
──最初に高校生から出た感想は、この体験の本質をすでに捉えていました。
これに応えたのは、診療所の看護師さん。
「うちの診療所に通っている患者さんは、長く通ってくれている方が多いです。病気の治療だけでなく、“先生に会いに行く”こと自体が生活の一部になっていたりするんですよ」
特に慢性疾患で定期的に通院されている方にとって、病院は単なる治療の場ではなく、安心できる居場所にもなっています。患者さんの笑顔の背景には、医療者との信頼関係や心の通い合いがありました。
“忙しさ”を見せない工夫と、声をかけやすい雰囲気づくり
生徒から「看護師さんって忙しいイメージがあるのですが、患者さんが声をかけづらくないですか?」という質問も出ました。
「もちろん忙しいです(笑)でも、それを患者さんに感じさせないように気をつけています。“今ナースコール押したら悪いかな”と思わせてしまうと、患者さんが言いたいことを我慢してしまう。それは避けたいんです」
そう語ったのは看護師の柴田さん。患者さんの“言いたいときに言える”状況をつくることが、信頼関係の第一歩。小さな声かけや表情、世間話を交えた会話の積み重ねが、患者さんにとっての「安心感」につながっているという言葉が印象的でした。
“検査”から支える医療の現場──臨床検査技師の視点
臨床検査技師の職員からは、血液検査や心電図、検診での関わりについて紹介がありました。直接患者さんと長く関わることは少ない職種ですが、「検査結果を通して“患者さんの声にならない情報”を医師に伝える役割がある」と語ってくれました。
また、院内でのスムーズな情報連携や、職種間の垣根を越えた協力体制があるからこそ、迅速な対応が可能になるという話もありました。
「今日の患者さんの困りごと」が、医師の専門分野
座談会の後半からは、総合診療医である武井先生が加わりました。先生は開口一番、「私の専門は“今日の患者さんの困りごと”です」と答え、会場がざわつきました。
「医療には“正解”があるわけではありません。薬にも、治療にも“万能”なものはありません。患者さんが納得して、一緒に決めていく。そこがとても大事です」
と武井先生。ワクチン接種や慢性疾患の薬など、どんな治療にもリスクとリスクがあります。「だからこそ患者さんと“話すこと”が重要であり、合意形成の上で医療を進めることが大切なんです」と語りました。
「地域とともに生きる医療」を学ぶ
病気だけを治すのではなく、「患者さんの暮らし全体を支える」──地域の診療所では、医師が病気だけでなく生活背景、家庭環境、経済状況まで含めて診ていく必要があるといいます。
「その人がどうやったら“その人らしく”生きていけるかを考える。それが地域医療なんです」
大病院では分業化が進んでいる一方、地域の診療所では“総合力”が求められます。医師・看護師・検査技師、それぞれの立場から、患者さんにどう寄り添うか──その姿勢を高校生たちは実感することができました。
高校生とのQ&A(一部抜粋)
Q. 病気でつらいのに、なぜ患者さんは笑顔でいられるの?
A. 「話せる」「聴いてもらえる」ことが、安心感につながります。医療者との信頼関係が笑顔を生みます。
Q. 医師と話す時間が長いのはなぜ?
A. その方の持っている悩みや課題を“共有”することが、治療の第一歩だからです。武井先生は「話すことがとても大切」と考えています。
Q. 検査技師さんは患者さんと接しないの?
A. 検査結果を通じて、患者さんの体の情報を伝えています。医師や看護師と連携して診療を支えています。
Q. 忙しそうだけど声かけてもいいの?
A. はい!どんなときでも声をかけやすい雰囲気をつくるように努力しています。
Q. 総合診療ってどんな仕事?
A. 専門を持たず、目の前の患者さんのあらゆる問題に寄り添います。「困っていること、全部話してほしい」と先生たちは言っています。
最後に──体験を終えた高校生たちの感想
「医療って“技術”だけじゃないんだなと感じた」「患者さんの話を聴くことも医療の一部だと知った」「先生が“正解はない”って言ったのが印象的だった」──高校生たちの素直な言葉が、今回の体験の学びを物語っていました。
医療の道をめざす高校生たちにとって、今回の体験はきっと忘れられない出会いと気づきの連続だったはずです。