支える医療を学び、志を育む2日間
― 栃木民医連 2025年度 新入職員研修(2日目)レポート ―

4月2日、新入職員研修の2日目が開催されました。この日は、栃木民医連の理念と実践をより深く知るための講話が2本行われました。講師を務めたのは、栃木民医連事務局長の工藤氏、そして栃木民医連理事・栃木医療生協副理事長の武井大医師。現場のリアルな声とともに、民医連で働くことの意味を問い直す、濃密な時間となりました。


◆ 工藤事務局長「民医連とは何か? 綱領に込められた思い」

まずはじめに、栃木民医連事務局長の工藤氏より「民医連とは何か?」をテーマにお話がありました。参加者には資料が配られ、民医連の成り立ちや理念を、パンフレットや憲法手帳などを用いながら確認していきました。

工藤氏は「民医連は“誰もが安心して医療と福祉を受けられる社会”をめざす全国組織であり、その理念を具体化するために、地域で実践しているのが栃木民医連です」と説明。医療生協の上部団体であり、無差別平等の医療・福祉の実現を掲げる民医連の歴史や役割を、全国とのつながりの視点から解説しました。

民医連は全国で140以上の病院、8万人を超える職員が加盟する大きな組織でありながら、1つひとつの現場がその理念を日々実践しています。工藤氏は、かつて戦後の貧困と混乱のなかで、地域の人々が自らの力で診療所を立ち上げてきた歴史を紹介し、「私たちの原点は“誰かが困っているとき、見過ごさないこと”です」と語りました。

特に印象的だったのは、民医連は「医療にかかれなかった人々の切実な願い」によって設立されたという事でした。工藤氏は、「営利を目的とせず、すべての人の命と健康を守る」という姿勢こそが、民医連の根幹にあると力を込めて語りました。

また、全国で取り組まれている様々な活動や学びの機会についても紹介されました。ジャンボリー(若手職員の交流企画)や、広島・長崎への平和学習、全国の奨学生との合同研修など、多様な交流の場があることを知り、「民医連は“人を育てる”組織でもある」ということを強調されていました。

「目の前の一人を支えると同時に、社会の構造にも目を向ける――それが民医連の実践です」。この言葉に、参加者の表情が引き締まったのが印象的でした。

最後に工藤氏は、日本国憲法の理念と民医連の綱領がどのように結びついているかを紹介し、「私たちは、憲法が掲げる“平和”や“人権”を実践する医療機関である」と話されました。実際に小さな憲法手帳を手に取りながら、その前文の一節を声に出して読み上げる場面もあり、民医連の活動の根底にある価値観を体感する時間となりました。


◆ 武井医師「人生に寄り添う医療をめざして ― 僻地医療・島での経験から」

地域医療を志す原点
午後の講話では、協立診療所の医師であり、栃木民医連理事でもある武井大医師が登壇しました。医師としての歩み、そして“家庭医”としての姿勢が、ユーモアを交えた語り口で語られました。

冒頭、武井医師は自身の生い立ちや大学時代の経験を語り、「なぜ地域医療を志したのか」について丁寧に話されました。特に、小笠原諸島・父島や三宅島などの離島での勤務経験は、参加者に強い印象を与えました。

暮らしに寄り添う医療の実践
「離島や僻地では、“患者”以前に“暮らす人間”として向き合う必要があります。何もかもが足りない環境の中で、いかにして信頼関係を築くかが医療の質を左右する」と語る武井医師の話は、医療現場の最前線に立つ者としての覚悟がにじみ出ていました。

また、ある高齢の患者が「病院で死にたくない」と語ったエピソードや、在宅医療を通じて“人生の最終章”に寄り添う医療の尊さを実感した場面が紹介されました。「病名をつけて治療することだけが医師の仕事ではない。その人の生活全体に目を向け、最もふさわしい支援を届けることが大切です」と語った言葉は、職種を超えて全員に響くものでした。

医師としての姿勢とチームの力
さらに、「診療所で働く医師として、患者さんの人生に寄り添い続けること。それは、単に医療を提供するだけではなく、相談されたことを一旦受け止め、共に考えるという姿勢が必要なんです」と続け、地域密着型の医療が持つ奥深さを伝えてくれました。

武井医師はまた、「医療はチームで支えるもの」であることも強調。事務職員や介護職、薬剤師、看護師との連携によって、より良いケアが提供できることを、自らの経験に基づいて紹介しました。「民医連の強みは、誰もが“人を大切にする”ことを共通の価値として持っていることです」と話され、あらゆる職種が支え合う現場の大切さを語ってくださいました。

民医連に集まる仲間たちの思い
さらに講話の中では、民医連で働く若手医師たちがなぜこの場所を選んだのかという声も紹介されました。たとえば、「患者さんを“診る”だけでなく、“暮らしごと見る”姿勢に共感した」「どんな困難なケースにも向き合い、チームで解決しようとする現場の空気に惹かれた」など、民医連の現場には“人を大切にする文化”が根づいていると武井医師は語ります。

また、患者との関係性についても言及がありました。「在宅医療では、医療従事者は“お客さん”ではありません。患者さんやその家族と、同じ生活者・地域の一員として関係を築く必要があります」。その言葉には、医療職としての“専門性”だけでなく、“人間性”が強く求められる現場の実感がこもっていました。

支え合いの医療がつくる未来
「困難な患者さんほど、チームで向き合うことで可能性が広がるんです。医療に限らず、地域の支援者やご家族とも協力しながら、その人にとって一番良い選択を一緒に考えていく――その連携こそが、民医連の医療だと思います」。

最後に、「この地域に、この診療所に、この仲間たちがいるからこそ、自分はこの仕事を続けられている」と語った武井医師の表情には、現場での喜びと責任感、そして後輩たちへの期待がにじんでいました。新入職員にとって、まさに“実践者の言葉”に触れる時間となりました。


◆ 研修を終えて ― 民医連の実践者としての一歩

2日間の研修を通して、新入職員たちは“民医連の理念”を「知識として学ぶ」だけではなく、「現場の語りから体感する」ことができました。民医連とは、理想を掲げるだけでなく、その理想を地域の実践に結びつけようとする営みである――そのことが講師陣の言葉から鮮明に伝わってきました。

「どんな困難があっても、排除せず、共に生きる」

この精神を胸に、新入職員たちはそれぞれの現場へと歩み出していきます。地域の中で支える医療・福祉を担う一人として、そして理念の実践者として、今まさに“新しい物語”が始まろうとしています。

今後、彼らが地域に根ざした実践の中で、患者や利用者、そして仲間とどのような関係性を築いていくのか――それぞれの現場で育まれていく“物語”に期待が膨らみます。民医連の一員として、自らが果たすべき役割に誇りを持ち、支える力として歩んでいく姿が目に浮かびます。

私たちは、この学びを単なる研修で終わらせず、それぞれの仕事の中で具体的な行動へとつなげていくことが求められています。理念の実践は、日々の一つひとつの積み重ねです。その始まりに立ち会えたことに、心からの敬意とエールを送りたいと思います。